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誰もがムダだと思った研究

小越 建典

誰もがムダだと思った研究

「高田先生、他にも研究テーマはありますよ」


同僚の研究者は、結果が出るわけはない、と

あきらかに自分の研究を見下していた。


現・日本医科大学教授の高田弘弥さんは、そう振り返ります。



高田さんの研究とは

物理的な刺激による“創傷治癒促進”。


超音波で微弱な刺激を与えると

通常より速いスピードで傷口が治癒すると言います。


「子どものときケガをして、お母さんが傷口に手を当てて

『痛いの痛いのとんでいけ〜』とおまじないをかけてくれると

と治った気になりますよね。気のせいだけではなく、

実際に手を当てただけで、細胞が活性化されて

治癒が速まっています。これがまさしく“手当て”なんです」(高田さん)


とはいえ、

医学界にそんな研究をしている者はいなかったし、

常識的には刺激が微弱すぎて、

生体に何も起こるはずがないと思われていました。


しかし、

高田さんは始めたばかりの動物実験で、

すぐに成果を出してしまいます。


マウスの実験で、

「もっとも効果の高い超音波の周波数と送り方」

を解明。


さらに、

人への臨床試験、医療現場での実用化へと

みるみるうちに進んでいきます。


前述の同僚は、

手のひらを返すように、

高田さんに好意的になったそうですが、

結果がすべてを変えるのは、世の常かもしれません。


では、

なぜ高田さんは結果を出せたのか?


ひとつは、

高田さんが医学ではなく工学出身の研究者だったから、

ということがあります。


門外漢だったからこそ、

医学では常識外の発想やプロセスを、

持ち込むことができました。


日本医大の研究室には

大量の工具や電子機器を持ち込み、

今でも夜遅くまで、自ら実験装置を手づくりしています。


そのおかげで、やりたい実験が、自由に、素早くできるのです。


既存のやり方にとらわれることもありません。


動物実験の前工程にあたる細胞実験では、

精密に生体の環境を再現しました。


当時の医学研究ではめずらしいプロセスでしたが、

最先端のノウハウを貪欲に学び、吸収しました。


環境を整え、初期に信頼できるデータを得たことで、

後の実験や製作の段階で想定外が減り、

驚くほどスピーディな実用化につながりました。


いま、高田さんの発見した原理は

傷の治療以外に応用の範囲を広げています。


そのひとつが、落合陽一氏が代表をつとめる

ピクシーダストテクノロジーズと共同開発した

育毛デバイス「SonoRepro(ソノリプロ)」。


「薄毛治療に革命をもたらす!」と、

メディアや薄毛に悩む人から注目を集めています。



誰もがムダだと思った研究

 

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