私たちは皆、鎖につながれた「サーカスの象」だ。
象は本当は鎖を引きちぎり、逃げる力を持っている。
でも、象は逃げない。
なぜか?
子どものころは、鎖に抗って逃げようとしたが、力がないからできなかった。
大きくなっても、「自分にはできない」と思い込まされ、逃げようともしなくなるのだ。
私たちは多かれ少なかれ、固定観念を持ち、そこから逃れられずにいる。
心当たりがある方には、
「鉄マフぼう」の生みの親
村瀬勝彦社長の物語が
ヒントになるはずだ。
村瀬さんは帽子の製造卸で
70年の歴史を持つ
村瀬商会の三代目だ。
村瀬さんは仕事の中で、
こんな言葉をよく聞いたという。
「こんなものは帽子じゃない」
古い慣習が根強い帽子業界は、
デザインや製造法、売り方に至るまで、
決まったやり方があり、
そこから外れると批判される。
何かがおかしいと思いながら、
村瀬さんに抗う力もなく、
常識の中に埋もれていった。
広げてマフラー、畳んで帽子、
鉄道がデザインされた
「鉄マフぼう」はまさに、
「こんなものは帽子じゃない」
の代表格だ。
社長就任早々に企画して、
先代からも社員たちからも
「売れるはずがない」とあきれられた。
それだけ言われれば、自信も折れる。
それでも知り合いの勧めで、
恐る恐るネットで売ると
まさかの売り切れになった。
振り返れば、このときすでに、
村瀬さんは考え方のスイッチを
切り替えていたのだろう。
村瀬さんは、商品企画の基本とされる
過去の売上データでも、
その年のトレンドでもなく、
ただ4歳になる鉄道好きの
息子をみていた。
彼は帽子もマフラーも嫌がったが、
大好きな新幹線がデザインされた
「鉄マフぼう」は
喜んで身に着けてくれた。
どんなところが気に入り、
どんな風に商品を扱い、
どんな笑顔を見せてくれるか、
村瀬さんはよく理解した。
新しい商品を企画するときは、
目の前にいる息子の反応を想像して
アイデアを考えることができる。
その「手触り」が、
村瀬さんを固定観念から解放したのだ。
先人の知恵、業界の常識、教科書やニュース…
私たちには、たくさんの
生きるヒントが与えられている。
しかし、自分の感覚をともなわない知は、
ときに不要な固定観念をうむことがある。
そんなときには、
身近にある体験を見つめ直すと良い。
村瀬さんのように足かせを外し、
新しい道を見出すきっかけを
つかむことができるだろう。
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