指先から、希望が広がる話です。といっても、私たち人間ではなく、「ロボットの指先」です。 ふだん意識することはありませんが、人間の手、ことに指先の性能はすごいものです。硬さや質感、重さや重心を瞬時に判断し、ものをつかんでいます。もちろん、ロボットもモノをつかんだり、持ち運んだりできるわけですが、人間のような繊細な感覚を再現するのは大変です。 フィンガービジョン社は、「視触覚」というアプローチで、ロボットの新しい可能性を開こうとしています。視触覚とは、「画像(カメラ)をベースに触覚を再現する」技術です。ロボットがモノをつかむ先端にカメラを内蔵し、画像処理で力やすべりを測定します。 電気抵抗で圧力を感じ取ったり、ローラーボールですべりの速度や距離を検知するこれまでの触覚センサーと比べ、繊細で複雑な作業が可能になりました。 視触覚センサーが活躍するのは、たとえば食品の盛り付けです。 同社によれば、弁当や惣菜の盛り付けには一兆円規模の市場があり、多くの工程が人間によって行われています。 おにぎりやサンドイッチなど、定型的な食品なら自動化もしやすいのでしょう。しかし、形も重さも重心も違う肉や魚、野菜などを、毎日違う容器、違う分量で盛り付ける、といった作業は一筋縄ではいきません。 視触覚センサーのもっとも大きな利点は、「学習が必要ない」ということ。画像から状況をリアルタイムに判断し、上記のように繊細な盛り付け作業を、正確に、失敗せずに行うことができます。 非常に多様なロボット作業に利用可能で、圧倒的に経済性が高いのです(ひとつの作業に特化した専用機を用意したり、学習の手間や時間をかけずに済む)。 賢明な読者の皆さんはお気づきのことでしょう。人間の指に限りなく近い精細さと汎用性は、食品盛り付けに限ったことではありません。 例えば、農作物の収穫作業。野菜や果物を傷つけることなく、つかんで持ち運びできるようになるでしょう。内視鏡などの医療機器に活用して、検査や手術の精度を上げることもできそうです。その他、人間がやらざるを得なかった工場内作業が、ロボットに大転換する可能性があります。 人手不足やコストダウン、品質や安全性まで、実に広範の課題を解決する技術だと思います。
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