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  • 小越 建典

株式会社大谷翔平


株式会社大谷翔平


キャンプ中から一挙手一投足が注目をあつめ、結婚ともなれば号外級のビッグニュースとなる大谷翔平選手。ここまで人の心をつかむのは、なぜなのか? 彼の歩みを「株式会社大谷翔平」にみたてて、ビジネス的な視点で考察してみました。

①圧倒的なプロダクト・アウト

企業の市場戦略を、「プロダクト・アウト」「マーケット・イン」の2つにわける考え方があります。


  • プロダクト・アウト…自社がよいと考える商品を投入する

  • マーケット・イン…顧客が望むもの、売れるものだけをつくる


日本の高度成長期は、良いモノを作れば売れる、というプロダクト・アウトの時代でした。

しかし、モノが行き渡り、技術が成熟すると、性能が優れた商品を開発するだけでは、売れなくなりました。

顧客ニーズの深い理解に基づくマーケット・インのアプローチが広がります。

両者は相互に補完する関係にありますが、上記のように、現代ではプロダクト・アウトはとても難しい。多くの場合、マーケット・インが基軸になるのではないでしょうか。

これは、個々の人材にも当てはまること。

特別な才能を持ったプロスポーツ選手でさえ、自分のプレースタイルで突き抜けられる(プロダクト・アウト)のは、おそらくごく少数です。

多くは、ライバルとの兼ね合いやチームの事情の中で、役割をみつけ、活躍の場をつくっていきます(マーケット・イン)。

(一般のビジネスパーソンでも同様ですよね)


一方、今の大谷翔平選手は、自分の道を追求し、好きな仕事を思う存分楽しんでいるように見えます。

その姿こそが、人々を楽しませ、お金を払う理由になっています。

圧倒的なプロダクト・アウトの市場戦略です。

では、そんな難しい戦略が可能なのはなぜか?

もちろん、才能と努力なのですが、それ以外にも…

②挑戦&成長できる市場を選択

大谷選手は高校時代、卒業後はすぐに渡米し、メジャーリーグに挑戦することを明言していました。

しかし、当時、栗山英樹監督率いる日本ハムにドラフト指名を受け、翻意して日本プロ野球界に入ります。

決め手は日ハムのプレゼンでした。

(おそらく本人も難しいと思っていた)投手と打者、二刀流への挑戦を提案し、日本の環境なら、それが可能なことを示したのです。

誰もやったことのないことにチャレンジし、自分を高められる環境こそが、あれだけ意志の強い大谷選手を動かしたのでしょう。

そして日本球界で見事活躍し、二刀流が可能なことを証明します。

そして、2017年のオフにロサンゼルス・エンゼルスに移籍。

メジャーでも「非常識」と考えられた二刀流をエンゼルスは容認し、大谷選手は2度もMVPを獲得します。

大谷翔平選手は戦う環境、ビジネス的には「市場の選択」に優れています。

その根本は、お金や名誉など外的な要因ではなく、挑戦できる、成長できるという「内的な要因」に向かっています。

自分を高める市場を選択し続けるからこそ、「圧倒的なプロダクト・アウト」が可能なのです。

その結果、昨オフには、ロサンゼルス・ドジャースへ1000億円という大型移籍が実現しました。

そして今は、誰もが二刀流での活躍を期待しています。

この「期待」こそが、成績やパフォーマンス以上の「商品力」です…▼

③壮大なプロセスエコノミー

ベーブ・ルース以来例がなかった「二刀流」の実現は、ビジネスで言えば、とんでもない「イノベーション」です。

イノベーションとは単なる革新ではなく、「馬車が鉄道に換わるような」次元の異なる転換を言います。

野球で言えば、シーズンのホームラン記録を50本から60本に塗り替えるのは「進歩」の範囲。投打でトップ数%の成績を残すのはそれとは別次元で、イノベーティブな挑戦と言えます。

その挑戦にこそ、国やチーム、スポーツの枠を越え、人々は熱狂します。

これは一種の「プロセスエコノミー」です。

プロセスエコノミーは、実業家のけんすうさんが提唱したキーワードです。

商品やサービスのアウトプットだけでなく、うみ出すプロセスが共感をよび、収益につながるという考え方。

クラウドファンディングやライブ配信の投げ銭、あるいはオーディション番組などが、プロセスエコノミーの典型例です。

株式会社大谷翔平も、プレーのパフォーマンスという完成品だけでなく、たぶんに「前人未到の挑戦というプロセス」を、売っている。

プロダクト・アウトも、挑戦と成長を重視した市場選択も、そのための重要な戦略である。

そう考えると(ご本人はそんなつもりはないでしょうが…)、大谷選手の一挙手一投足から、現代ビジネスのエッセンスが見えてくるのではないでしょうか。



株式会社大谷翔平


 

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