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小越 建典

譲れないもの 前編

運命の出会い


「サラリーマンは向いていないとわかっていました。

満員電車も、付き合いの飲み会も苦手です。


それに、こう見えて我が強いんです」


にこやかに、ゆっくりと言葉を選びながら、

杉山勝は自らを語る。


時代は、今からちょうど20年前。


勤めていたアパレル商社から、

ごく自然な流れで独立し、

ブティックを開業して3年目。


はじめのうちこそ好調だったが、

徐々に経営は厳しくなり、

一カ月の生活費も稼げなくなった。


数カ月先には、現在の妻との結婚も控えていた。


いくらサラリーマンが性に合わなくても、

自分が稼がなければ、

二人の生活はありえない。


杉山はブティックを閉じる決意をし、

就職活動をはじめることになる。


この先、失意の半年こそが、

人生を大きく前進させるとは、

知る由もなく。



シロウトだから解決できる


店を閉めてテナントを退去する際は、

原状回復して返すため、

内装の解体作業を行うのがふつう。


現在のようにホームページが

充実していない時代だから、

杉山は電話帳で解体事業者を探し、

なんとなく「良さそうだな」と思った

数社に電話をかけた。


相手の顔はもちろん見えず、

ほとんど情報がない状態で

店に来てもらい、見積もりをとる。


そこで、杉山は信じられない問題に直面した。


「ガラの悪い人が乱暴な言葉で話してきたり、

明らかにいい加減な見積を出してきたり…」

(杉山)


最終的には、知り合いのつてで、

良心的な解体事業者に依頼できたが、

それ以前の理不尽な体験が運命を決めた。


もちろん杉山に専門的な知見はないが、

相当に根深いものがあることはわかった。


「だからこそ、イケると思った」と

杉山は当時のひらめきを振り返る。


業界内で放置された潜在的な課題は、

シロウトの自分だからこそ解決できる。


今思えば、じっくり考える時間ができたのも、幸運だった。


閉店セールが一段落つき、

商品も、話し声も消えた店内で、

杉山はひとりビジネスプランを練る。


多くの人にとって、解体は一生に一度、

あるか、ないかの出来事。


みんな初心者だから、

何を基準に、誰に頼めばよいかもわからない。


おそらく、自分と同じ経験をしているはずだ。


良心的な事業者と出会い、

適正な価格で依頼できる仕組みを構築すれば、

人の役に立ち、稼げるサービスになる。


時代はまさにインターネット拡大期で、

参考になるマッチングの仕組みが

うまれはじめていたときだった。


サラリーマンに戻る前に、もういちど挑戦したい。


妻とも話し合い、ワンチャンスにかけることを決意。


セールで得た利益を握りしめ、

杉山は「解体サポート」の事業をスタートする。


解体

 

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