快進撃と挫折
解体の必要なユーザーの無料で相談を受け、
優良な解体事業者を紹介。
工事が決まれば、事業者から、
成果報酬の手数料を得るのが、
「解体サポート」のビジネスモデルだ。
「そんな荒っぽい業界で
実態もよく知らない君が、
ビジネスをはじめるなんて無謀だ」
友人や先輩起業家からはそう言われたが、
反対されるたびに杉山は自信を深めていった。
常識が通じない不透明な業界であるほど、
透明な仕組みをつくる意義も、
ビジネスチャンスも大きいはずだ。
杉山はホームページを公開してユーザーを集めるとともに、
電話帳の端から端へ、解体事業者に営業をかける。
「ネットで注文とれるわけねえだろ!」
と、電話口で怒鳴られることも日常茶飯事だったが、
懸命に話すと、聞いてくれる人も増えていった。
地方の事業者にも会いに行けば、
「本当にこんなところまで来たのか」と、
驚きながら、少しずつ信用してくれた。
結果的に、半年ほどしてビジネスは軌道に乗る。
杉山の読み通り、「解体サポート」は
潜在的に待ち望まれたサービスだった。
社会問題としてメディアにも特集され、
杉山が取材を受けるなど話題となり、
市場とともに自社の売上も拡大していった。
しかし、試練はその後にやってくる。
儲かるビジネスができれば、
マネをする者が現れるのが世の常だ。
はじめのうちは、
単なる模倣が現れては消えていったが、
集客に長けたインターネット企業が、
本格的に参入すると状況は変わった。
彼らは杉山のやり方をブラッシュアップし、
よりよいサービスを構築していった。
解体サポートのシェアは奪われ、
成長は鈍化していく。
変えられないもの
杉山のビジネスの生命線であり、
同時にボトルネックとなっているのは
「人」だ。
ユーザーからの相談には、
必ず電話で対応し、詳しい事情を聞く。
契約する解体事業者には必ず会いに行って、
相手の得意な業務や人柄まで確かめる。
これは、多くのインターネットビジネスが
採用するセオリーではない。
実際、競合はできるだけ人を介さず、
ネット上のマッチング、一括見積もりの仕組みで、
どんどん件数をこなしている。
杉山の「解体サポート」はそもそも、
効率でかなわないモデルなのだ。
それでも杉山は、
「(人を介さないマッチングは)
自分のやりたい仕事ではないし、
向いてもいないと思う」と
路線変更の可能性を否定する。
幸いにして、
「一括見積もりの額より少し高くても、
紹介してもらったほうが安心できる」と、
言ってくれるユーザーも少なくない。
ビジネスモデルの違う他者サービスと
棲み分けわれる公算がある。
何より、何もない自分を信頼し、自分とサービスを育ててくれた
解体事業者を失望させたくない。
これからもずっと二人三脚で、
より良いサービスを提供していきたい。
これはもう、効率の問題ではない。
「我の強い」起業家 杉山勝の生き方なのだ。
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