M&Aを民主化する 前編
- 小越 建典
- 2024年7月24日
- 読了時間: 3分
更新日:2024年10月16日

M&A業界の闇
彼こそ、業界のディスラプター(破壊者)だ。
「日本全体で取り組むべき課題なのに、
業界の構造は歪んでいる」
MANDA代表の森田 洋輔は、未経験から飛び込んだ
M&Aのビジネスをこう断じる。
少子高齢化と人口減少なか、
多くの中小企業が後継者不足、事業承継の問題に直面している。
そのため、企業や行政の支援が整えられると同時に、
技術や人材を引き継ぐ買い手のニーズも顕在化し、
M&Aの件数は10年で2倍近くになった。
ただ昨今では、その中核的な役割を果たす
M&A仲介会社のあり方が問題視され、
政府が指摘するまでに至っている。
ひとつは、「両手取引」による利益相反だ。
中立性を保つため、
仲介会社は売い手と買い手の
双方から手数料を得るのがふつう。
しかし、基本的に一度しか取引しない売り手に対し、
大口の買い手は何度も取引する可能性がある。
仲介会社が自社の利益のために、
買い手に有利な行動をとりやすい構造が指摘されている。
もうひとつが、高額な手数料の問題。
仲介会社が売り手、買い手の双方から、
数千万円の報酬を得るケースが少なくない。
M&Aの交渉は複雑で、
成約には財務や法務の専門家の作業が必須だから、
仲介に費用がかさむのは仕方がないのかもしれない。
一方で、サービスの質と範囲が、
対価に見合っていないという声を、
森田は多くの売り手、買い手から聞いていた。
「M&Aをユーザーオリエンテッド(顧客第一)に」
森田が、業界の分厚い壁に挑むたったひとつの理由だ。
忘れられない出来事
M&A仲介のゆがみを解消するため、
森田がとるアプローチは
「テクノロジーによる情報のオープン化」だ。
仲介会社に利益相反の構造があるとすれば、
それは情報の非対称性のせいだ。
M&Aはセンシティブな案件であり、
売り手は誰がどんな事業を求めているか、
買い手はどんな売り事業があるのか、
市場で情報を得ることができない。
仲介会社だけが情報を握っているから、
人もお金も集まるが、
そこにアクセスできない小さな会社は、
M&Aの選択肢すらないという構造。
このことに、森田は大きな矛盾を感じていた。
ぜんぶ、オープンにしてしまえば、
資金に余裕のない場合も含め、
より多くの企業が、フェアな環境で、取引できるはずだ。
彼の思想の背景には、
インターネット拡大期を過ごした
ヤフー・ジャパンでの体験がある。
後のPayPayにつながる決済サービスの
プロデューサーとして活躍してきた森田。
インターネットに仕組みをつくると、
1日に何十億円というお金が動いていくことを
目の当たりにしていた。
テクノロジーで情報を滑らかにすることで、
新しい体験を提供できる。
そして、その過程には、既存の業界の破壊が伴う。
森田の身体に染み付いた行動原理と言ってもいい。
もうひとつは、父の急死とともに
経営していた会社を廃業させた経験だ。
2008年、まさに森田がヤフーの
決済事業を拡大させていたそのときのことだった。
「本当に廃業しかなかったのか?」
あのときもっと、たくさんの選択肢があれば、
父の会社を残し、
雇用を守り、ノウハウを継承できたかもしれない。
森田の中に、小骨のような想いが残っていた。
だから、M&A仲介の問題を知ったときは、
迷わなかった。
2018年7月、ヤフー時代の仲間とともに
MANDAを創業する。

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